「様子をみましょうか?」という言葉の前に、本当に必要なもの。
こんにちは。丸橋リサです。
気づけば今年もあとわずかですね。皆さんはどんな一年を過ごされましたか?
私はここ一年ほどInstagramの発信に集中してしまい、なかなかホームページのブログを更新できずにいたのですが、今日はどうしても書いておきたいテーマがあります。
それは、歯科医院でよく使われる「様子を見ましょうか」という言葉についてです。
患者さんとの診療の中で、歯科側がとてもよく使うこの言葉。もちろん、様子を見ること自体が悪いわけではありません。今すぐ治療する必要がないケースや、自然な経過を観察したい場面もあります。
けれども、私はずっと違和感がありました。
“様子を見るって、一体いつまで?”
何を基準に、どんな状態になったら、どうなれば「様子をみる」を終えて次のアクションに移るのか?そこが患者さんに伝わらないまま「様子を見ましょう」とだけ言ってしまうと、それは患者さんにとって放置と同じになってしまうことがあるからです。
「様子を見る」という言葉はとても便利ですが、主語がないと誤解を生みます。いつまで様子を見るのか、どんな症状が出たら連絡すべきなのか、どこまで進んだら治療に移るのか、どの時点を悪化と判断するのか。それが曖昧なままだと、患者さんは本当に“様子を見続ける”ことになります。
そして数ヶ月、数年後に状態が悪化したときに、「ずっと検診に行っていて様子みでいいと言われていたのに」「結局ダメになるならもっと早く言ってほしかった」と受け取られてしまうことがあります。これは患者さんにとっても、歯科側にとっても大きな損失です。誰も悪くないのに、コミュニケーションの不足で信頼が揺らいでしまうのです。
ではどうすればいいのか。
私は、「様子をみましょう」の前に“主語”と“基準”をつけるだけで、歯科衛生士の説明の質も、医院全体のリコール率も大きく変わると思っています。
例えば、
◯◯の炎症が○月○日までに引くかどうか様子をみましょう。
痛みが△△のレベルまで上がったら治療に移りましょう。
××が進行する兆候があれば、次回方針を変えましょう。
このように主語と基準があるだけで、様子見は「放置」ではなく、明確な「経過観察」になります。患者さんの安心感も大きく違いますし、プロとしての言葉に重みが出ます。
主語と基準をつけて伝えることは、歯科衛生士や歯科医師のためだけではありません。患者さん自身が“自分の口の状態を理解できるようになる”ことにもつながります。これはセルフケアの質に直結し、結果として治療の成功率にも影響します。
私たちの言葉ひとつで、患者さんの行動は変わります。
患者さんの行動が変われば、口腔内、全身の未来も変わります。
だからこそ、「様子をみましょう」という言葉を使うときには、必ず“その人の未来のための意図”を込めたいと私は思っています。
「様子をみる」は本来、前向きな言葉です。
“何もしない”のではなく、“最適なタイミングを待つ”という医学的判断でもあります。
ただ、それが患者さんにとって安心につながるか、不安につながるかは、言い方ひとつで大きく変わります。
信頼関係は、治療の成功以上に大切な財産です。
その土台をつくるのが、日々の小さなコミュニケーション。
なかでも“伝え方”には、私たちが思っている以上に力があります。
だからこそ、私はこれからもこのような視点をもっと医院に広めていきたいと思っています。
本年も、皆様には大変お世話になり、心より感謝申し上げます。
どうか心あたたかな年末年始をお迎えできますよう、お祈りしております。
そして来年も、また多くの方々にお会いできることを楽しみにしています。
丸橋 リサ
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